外来生物の規制

もう1週間前のニュースなのだが,佐賀県で「佐賀県環境の保全と創造に関する条例」にもとづく移入規制種の答申があった。このあと答申通り告示されれば,来年の4月から佐賀県内での指定種の野外への放逐・播種,決められた施設以外での飼養栽培が禁止されるなどの規制がかかることになる。
佐賀県環境の保全と創造に関する条例」は平成14年10月に公布されており,国の外来生物法よりだいぶ前から枠組みはできていた。移入規制種は,昨年末に指定種候補として106種があげられ,パブリックコメント手続きなどされていたが,オオクチバスや緑化植物など経済的な利害関係が絡むため,指定種の選定が遅れていた。
今回,県環境審議会から答申された指定すべき移入規制種は以下の32件。【植物】オオカナダモ,オオフサモ,キショウブボタンウキクサホテイアオイ,ハリエンジュ,イタチハギ,オオキンケイギク,オニウシノケグサ,外来コマツナギ,シナダレスズメガヤ,コンテリクラマゴケ,ヒメヒオウギズイセン,イチイヅタ,オオカワヂシャ,コカナダモ,ブラジルチドメグサ,ミズヒマワリ。【淡水魚類】オオクチバス,ガー科の魚類,カダヤシコクチバス,タイリクバラタナゴ,パイク科の魚類,ブルーギル。【両生類・爬虫類】カミツキガメミシシッピアカミミガメワニガメ。【哺乳類】アライグマ,ヌートリアハクビシン,ヤギ。
告示されると,のり面の吹きつけに使われる緑化植物のシナダレスズメガヤやイタチハギが使えなくなる(ネズミムギやカモガヤなど指定されなかった種が使われるだけかもしれないが)。お祭りの縁日でミドリガメミシシッピアカミミガメの幼体)が売られることもなくなるだろう。
佐賀平野にはクリークと呼ばれる水路が縦横に走っており,水生生物の宝庫であった。しかし多くのクリークでは上記の移入種がすでに侵入しており,在来種は減少している。答申に入っていない種だが,ソウギョが放流されたため水生植物がほぼ全滅したクリークも見たことがある。佐賀県条例は,移入させてしまった場合の原状回復義務はあるが,すでに生息してしまっている移入種の防除についてはふれていない。
移入種の防除はコストだけかかって見た目の利益のない事業になってしまうので,生態系の回復が将来的な公共財の価値を高めることを納得させなければとても予算が付かない。だから,指定種が告示されてもすぐにはすでに入ってしまった移入種についての現状は変わらないだろう。外来生物や希少生物の種指定の規制や保全は,自然公園や自然再生事業のようなある場所の群集,生態系,景観レベルの保全対策とあわせて行っていく必要がある。法律や条令ができた時,それをどのように効果的に使って環境保全や再生を進めていくのか提案していくのもコンサルタントの仕事である。