世界測地系の地図上の日本測地系3次メッシュポリゴンを作る(3)

QGIS

オープンソースのデスクトップGISソフトウェアであるQGISは,以前はpython errorとかで止まってしまって泣くことがあったのですが,現行の1.6.0はとても使いやすいと思います。
フィールド調査に行きその調査結果を報告書や論文にまとめるような仕事をしている方はぜひ自分のパソコンに入れて使ってみてください。何十万円もする商用GISを使わなくても,かなりいろんなことができます。
ダウンロードサイト(英語)
http://www.qgis.org/wiki/Download
オープンソース地理空間ソフトウェアのサポートサイト(OSGeo.JP)
http://www.osgeo.jp/
OSGeo.JP内のQGIS ユーザーズガイド(日本語訳)
http://www.osgeo.jp/user_guide/user_guide.html

QGISをインストールして起動したら,さっそく前回作成したf3meshN.shpとf3meshW.shpを表示してみます。ツールバーの「ベクタレイヤの追加」をクリックしてC:\GIS\に入っているシェープファイルを選択します。なお,このメッシュファイルは英数字だけですが,Windowsの場合,文字コードはSHIFT-JISに変更しておいた方がよいと思います。

読み込んだら左側のレイヤのところで1つを選んで右クリックし,プロパティを表示させます。塗りや線の有無や色を変更します。

日本測地系のメッシュf3meshNを塗りなし・黒線で,世界測地系のメッシュf3meshWを青線にしました。また,メッシュ1つ1つについている属性をラベルに表示することもできます。拡大してみると,日本測地系のメッシュの方が西北側へずれていることがわかります。

ところで,座標系については後で説明しますが,この地図がどの座標系によって表示されているか確認しておきます。メニューの設定からプロジェクトのプロパティを表示させます。デフォルトの座標系はWGS84だと思います。今は特に変更する必要はありません。「'オンザフライ’座標系変換を有効にする」にチェックを入れておきます。

それから,Rで生成したシェープファイルは座標系の定義がされていないので,定義をしておきます。メニューの「ベクタ→データマネジメントツール→現在の座標系を定義する」で座標系はJGD2000にします。


基盤地図情報25000 WMS配信サービスを利用する

メッシュは表示できたけれど,地図が表示されていなければどこがどこだかわかりません。地図のシェープファイルがあればレイヤに追加すればいいのですが,それは後述するとして,まずはインターネットを使った便利な方法を紹介します。
基盤地図25000 WMS配信
http://www.finds.jp/wsdocs/kibanwms/index.html.ja
「ご使用方法」にQGISでの使い方があります。
接続したらAdmAreaBdr, Cntr10, BldA, WL, RdEdg, RailCLを選択して追加します。

表示できましたか。
え,地名表示がほしい? では地名WMS配信サービスにも接続しましょう。
http://www.finds.jp/wsdocs/pnwms/index.html

こんな感じで表示できますか。以下は福岡県大牟田市の南部。日本測地系メッシュでは493034の2次メッシュにわずかに福岡県域が含まれています(49304490の黒枠の上の方)。実は世界測地系のメッシュ(青)では493044のメッシュにおさまります。

ところで,なんかおかしい。上下につぶれていると感じませんか。GISの緯度経度表示では,緯度の1秒(約31m)と経度の1秒(約26m,北へ行くほど短くなる)が同じ長さで表示されてしまうため,東西へつぶれた形になります。
普通の紙の地図と同じように東西も南北も距離に会わせた座標にするためには,緯度経度ではなくある決められた原点からのX軸とY軸の距離座標できめられた投影座標系に変更する必要があります。ここではとりあえず福岡県あたりの25000地形図と同じUTM52系にします。*1
再び,設定→プロジェクトのプロパティで,参照座標系を今度はJGD2000/UTM 52Nに変更します。画面から地図が消えますが,メッシュのレイヤを選択して「右クリック→レイヤの領域にズーム」とすればシェープファイルのレイヤは再表示できます。右下に表示されていた座標の値が「度」の表示からかなり大きな数字にかわったことがわかると思います。
残念ながら,WMSレイヤは座標系を変更すると表示できなくなります。いったんレイヤを削除して,再度WMSレイヤを追加してください。その際,投影法がUTM52Nになっていることを確認してください。
以下のような表示ができましたか? 今回は日本測地系のメッシュだけを赤で表示しました。

九州大学伊都キャンパスはまだ造成中ですが,道路などは平成15年ぐらいの状況が反映されているように思います。これで,20年も昔の1:50000地形図に印刷された環境庁の3次メッシュマップを使わなくても,新しい地図の上にメッシュが表示できます。
ところが,この地図を印刷しようとすると,実は問題があるのです。印刷のためにはコンポーザマネージャで新しいコンポーザを作って,地図やスケール,凡例などを設定してから印刷するのですが,WMSレイヤは基本的に印刷できないのです。すごく狭い範囲なら印刷もできるようですが,とてもフィールド調査の現地野帳用に印刷するのは無理でした。(スクリーンキャプチャーを印刷する手はありますが)
ということで今回はここまで。
次回は,インターネットで公開されている地理情報をダウンロードして利用する方法について書きたいと思います。

(続く)

*1:平面直角座標系にしようと思ったが,WMS配信地図が位置ずれを起こしてしまってよくわからなかったため